ボザール・デザインビューロー - 記事一覧
発行日時 | 見出し |
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2021.02.26 |
花・水・木-その5-
通常のステンドグラスの制作は建築と似ている。 しかしフュージングだけで作品を作るとなると、出来上がりの予測不能範囲は相当に広くなってしまう。 花3つに分かれた塀の左側は“花”をモチーフにしている。 水センターを占めるのは“水”のパーツだ。 木“木”は水を吸い太陽の光を受けて新しい命を創り出す。 36枚全てのガラス板が揃った。 ー続く |
2021.02.16 |
花・水・木-その4-
自分の頭の中にある想像だけで作品を創ることはできるだろうか? もちろんそれは可能だけれど、建築物と一体化するステンドグラス作品ならば、現地を見ないということが致命的なデザインミスに繋がる恐れがあると思う。 今回の仕事が決まった後、何度も現地の下見に行こうとしたが、その都度コロナ対策の緊急事態宣言やら何やらにぶつかって、結局一度も北海道から出られないまま納期が迫り、制作を開始せざるを得なかった。 僕は提出したデザインの一部を変更することにした。 デザイン変更フュージング作品に限らず普通のステンドグラス作品の場合でも、ある程度のデザイン変更は認めてもらえるよう事前に了解を得るようにしている。そうしないと自分の提出した原画が足かせになって、制作中のひらめきや工夫を生かせなくなってしまうからだ。 ストリートビューを見ていくつか気が付いたことがある。詳細は書かないが、現地の印象が大きく変わった。 サインとは?僕は作品に自分のサインを入れる時と入れない時がある。 ステンドグラスの仕事は原則として受注制作なので、注文主の意向が強く反映される。 サインをするべきかどうか迷ってしまう微妙な状況の時もある。 しかしストリートビューのおかげで自信を持ってデザイン変更することができたから迷いのあったサインを入れた。 ―続く |
2021.02.07 |
花・水・木-その3-
電気炉には5段まで棚を重ねることができる。 焼成温度790℃設定で試し焼きをしてみたら、僅かにガラスが溶けすぎたので本焼きは780℃に設定する。 電気炉のスイッチをONにしてから指定の温度に達するまで6時間半かかることも分かった。 ストライカーフュージング用のガラスには”ストライカー”と呼ばれる種類のものがある。 もうひとつの変化焼成後のガラスは、色のほかにもうひとつ変わることがある。 ―続く
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2021.02.03 |
花・水・木-その2-
少々乱暴な言い方を許してもらうなら、施主に提出した原画は目安にすぎない。 工房の2階片隅には”フュージング作業コーナー”があり、一通りの材料と共に作業台や照明が備えてある。 ガラスのサンドイッチ土台になるガラスをカットする。 具を並べるまずは作業台に土台のクリアーガラスを置く。 ―続く |
2021.01.24 |
花・水・木-その1-
新しい仕事がスタートした。 施主からいただいたお題は「花・水・木」、市木である「ハナミズキ」をもじったものだけれど、デザインのコンセプトとしてはシンプルで分かりやすい。素直にそのままのイメージで描いた抽象的デザインを提案し了承された。 ※ 建築物が完成するまで地名・施設名などの具体的表記を避けるよう施主から依頼されています。
デザインとサイズ今回の仕事は、風雨にさらされる設置場所であり、人に触れられる可能性もあるため強度と安全性が強く求められていた。 金属製の塀は”花・水・木”を表すため3枚に分かれており、それぞれに200w×960hほどのスリットが4本設けられている。ひとつのスリットを横に三分割して、200w×320hほどの厚板ガラスを合計36枚制作することになる。 この寸法は、フュージング用ガラスを製造しているブルズアイ社(米国)の元板サイズを12等分するところから割り出したものであり、同時にボザール工房の電気炉棚板サイズを考慮したものでもある。 頑張れ電気炉!ボザール工房設立と同時に購入した今の電気炉は、工房と共に働き続けて今年で37年になる。 元々この炉はステンドグラス用の絵の具を焼成することだけを目的にしたものなので、上限650℃に合わせて設計されている。しかしフュージングに必要な温度は800℃を超えることもあり、それは全く想定外のことだ。 今回の仕事に必要な電気炉の使用回数は12回、俺だって頑張っている、何とか今だけは働いてほしい、その後でゆっくり休んでいいから、と追い詰められた会社経営者のごときお願いをしているところ。 ―続く |
2020.11.15 |
懐かしき庭-その15-
伝統的ステンドグラス技法で用いる鉛桟は、多少別の金属を混ぜることもあるが、基本的に鉛だけで出来ている。 1996年にどうしても補強棒の姿を見せずに作りたい作品を思いついたため、初めて”補強芯入りレッドケイム”なるものを取り寄せ実験してみたところ、思いのほか補強効果があることが分かった。 救世主通常の鉛桟の断面。(幅6㎜、高さ7.5㎜、芯の幅1.4㎜) ステンドグラスの世界は色々と制約が多い。制作者がデザインをするときには、常にその制約の中で発想する癖がついてしまっている。中でも強度~補強の問題は最も煩わしいものだったが、そこから解放されて発想の領域が飛躍的に広がった。 「19世紀英国スタイルパネル」には、もちろん芯入りケイムを多用しており、そのおかげで中央メインの花のところに補強棒を入れることなく、すっきりと見せることができている。 ―終わり |
2020.11.09 |
懐かしき庭-その14-
ステンドグラスをどれほど正しく組み立てたとしても、それだけで十分な強度を持たせることはできない。鉛桟の寿命が尽きる100年後までそのままの姿を保つには”補強”が必要だ。 補強
鉛桟はその柔らかさによってガラスを衝撃や加圧から守ってくれるが、その反面自分の重さで徐々に曲がりはじめ、数十年後にはパネル全体が湾曲しガラスの破損を招く。 しかし日本では全く事情が異なる。 その頃の仕事はどれも補強の仕方で苦労しており、補強のためにデザインを犠牲にすることも多々あった。しかしそれから数年後に救世主が表れた。 ー続く
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2020.11.06 |
懐かしき庭-その13-
伝統的ステンドグラス技法では、組み立てに鉛製の桟を用いる。 組み立てステンドグラスが他の絵画と最も違う点は、その重量を支え、暴風雨に耐える強度を必要とする点だ。 「ステンドグラスの強度―その1-」2015年10月投稿 参考までにこちらもどうぞ; 本作品組み立て始まりの様子。 ー続く |
2020.11.02 |
懐かしき庭-その12-
絵付け作業の順番として、シルバーステイン絵付けは通常最後に行う。また、ガラスの裏側つまり外部に面している側に施すのが普通だ。その理由は二つある。 シルバーステイン絵付けシルバーステイン絵付けの実際の作業はいたって単純だ。 焼成後、炉から取り出したガラスピースの見かけは入れた時とほとんど変わらない。 ー続く |
2020.10.30 |
懐かしき庭-その11-
グリザイユ絵付けが終わったら、もうひとつ別の種類の絵付けがある。 シルバーステインとは?この絵の具は14世紀中頃、西欧ステンドグラスの歴史に登場する。 しかし銀製品では絵付け作業に向かなかったらしく、いつからか硝酸銀溶液などの液体を使うようになったが、それでもまだ発色のコントロールが難しかったため、近代では土に混ぜて粉状にしたものを水で溶いて使うようになった。 今その作品を見ると、やはり黄色が強すぎると思う。グリザイユの淡い調子をつぶしてしまっているし、メインの花を引き立てる背景でいてほしいのにこころなしか前に出てきてしまう。 10年ほど前から使っている今のシルバーステイン(アメリカ製)は発色が非常に安定しており、多少の条件の違いには影響されない。 ー続く |