NEWS No.43(2026年度)
農環境情報学類セミナー「農と環境のつながりを考える」(第1回)を開催しました
2026年4月に新設された農環境情報学類は、農業や環境分野において、ドローンをはじめとする情報技術や社会調査手法を駆使して情報を収集・分析し、地域を幅広い視点で捉えて課題を「可視化」し、解決に向けた取り組みを推進する人材の育成を目指しています。
当日は報道関係者をはじめ、買い物途中の市民の皆さまや本学関係者が来場。街中のオープンスペースという開放的かつ地域に開かれた雰囲気の中、私たちの食卓に欠かせない牛乳・酪農と環境、そして地域エネルギーの循環について活発な発信が行われました。
セミナーは同学類の井上教授による司会進行のもとスタート。冒頭には相原晴伴学類長が登壇し、開催にあたっての挨拶とともに、本日の講演者である日向教授・石川准教授の紹介を行いました。
【講演①】日本の酪農は特別なの? ―世界と比べて見える生産と環境のリアル―
講師:農環境情報学類 教授 日向 貴久
日向教授
はじめに、日向教授より、「日本の酪農は特別小さい?高い?環境に悪い?」という3つの問いを切り口に、豊富なデータを基に日本の酪農の現状を紐解きました。
世界の年間生乳量(約10億トン)のうち日本は25位の約730万トン(世界の1%弱)ですが、人口比で見れば決して少なくはないこと、また国内生産の半分以上(約400万トン)を北海道が占めていることを説明。さらに、北海道と都府県の構造の違いについてや、離農が進む一方で大規模化が進む現状を解説しました。
また、海外に比べて生産コストが高い要因として「輸入飼料への依存」に触れたほか、地球温暖化の原因として注目される「牛のゲップ(温室効果ガス)」にも言及。
日向教授は「国内の酪農で発生する温室効果ガスのおよそ半分が牛のゲップ由来というのは事実だが、どんな評価範囲を基準に考えるかによって環境負荷の見え方は変わる。温室効果ガスという一面的な指標だけで食品の価値を測っていいのだろうか。情報は見たものがすべてではない。だからこそ数字やイメージに惑わされず、多面的に考えることが重要である」と熱弁。これこそが、新学類が重視する「情報やデータを多面的に分析して課題を可視化する」という視点そのものであることを強調しました。
【講演②】ふん尿から見えてくるエネルギーと地域のつながり
講師:農環境情報学類 准教授 石川 志保
石川准教授
続いて、石川准教授より、酪農の現場において避けて通れない家畜の排せつ物管理と、それを地域資源へと変える最先端の取り組みについて解説しました。
乳牛は1日1頭あたり約65kgもの排せつ物を出しますが、それに対して生産される牛乳は約30L。これを私たちの身近な量に換算すると「牛乳200mlに対して、実は430gものふん尿が出ている」ことになり、食を支える裏側にあるリアルな数字に、来場者は驚きの表情を見せていました。石川准教授は、様々な牛舎の種類(つなぎ飼い、フリーストール、開放型・半開放型)に触れた上で、これら「やっかいなふん尿」を貴重なエネルギーと肥料に変える存在として「バイオガスプラント」を紹介しました。
石川准教授は、気象条件によって出力が大きく変動する太陽光や風力発電に対し、「バイオガスは『貯めることができる』再生可能エネルギーである」という最大の強みを提示。「農村だからこそできるエネルギーの組み合わせがあり、それぞれの得意を活かして地域に電気を届けることができる」と語りました。
さらに、ドイツでの留学経験を交えながら先進事例を紹介。「搾乳や給餌、牧草づくりで忙しい酪農家が、発電管理まで誰がやるのか?」という疑問に対し、ドイツでは酪農家自身が管理・売電を行っている実績を挙げ、「これからの酪農家は食料生産だけでなく、地域のエネルギー管理者としての役割も担っていく」という未来像を示しました。最後に本学のバイオガス発電のEMS(エネルギーマネジメントシステム)運用の最前線にも触れ、酪農が持つ持続可能な地域社会への可能性を語り締めくくりました。
【質疑応答】
講演終了後の質問タイムでは、会場の参加者から寄せられたさまざまな質問に教員が回答しました。国内外の酪農の現状やバイオガスに関する疑問について順次やり取りが行われ、予定時間を若干超えてのセミナー終了となりました。
質疑応答①
質疑応答②
【次回セミナーのご案内】
農環境情報学類では、引き続き第2回セミナーの開催を予定しております。皆さまのご来場を心より
お待ちしております。
参加費:無料(事前申し込み不要)
テーマ:食と農の「いま」と「これから」
日時:2026年7月4日(土)14:00~15:30
場所:紀伊國屋書店札幌本店 1階インナーガーデン
内容:
「令和の米騒動」とコメの「これから」(相原晴伴教授)
ドローンの農業利用と今後(小川健太准教授)
【関連】
◆農環境情報学類
https://www.rakuno.ac.jp/academics/department/agri-info.html
◆農環境情報学類 日向 貴久 教授(酪農・畜産経営論研究室)
https://www.rakuno.ac.jp/teacher/41539.html
◆農環境情報学類 石川 志保 准教授(バイオマスエネルギーシステム研究室)
https://www.rakuno.ac.jp/teacher/41551.html
◆紀伊國屋書店
https://www.kinokuniya.co.jp/
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