NEWS NO.12(2026年度)
犬猫だけじゃない命を診る ― 日本で唯一の大学病院「エキゾチックアニマル診療科」の挑戦 ―」
(獣医学類 伴侶動物外科学ユニット 峯弘講師)
2024年10月、酪農学園大学附属動物医療センターに新たに設置された「エキゾチックアニマル診療科」。ウサギや鳥類、爬虫類、小型哺乳類など、犬猫以外の動物を専門に診療する大学病院の診療科として、日本で唯一の存在です。
北海道内ではもちろん全国的にも不足しているエキゾチックアニマルの専門獣医療を担いながら、教育・研究の拠点としても役割を広げています。その最前線で、診療・教育・研究を一体的に進める峯弘講師(獣医学類 伴侶動物外科学ユニット)に、その取り組みと想いについて伺いました。
獣医学類 伴侶動物外科学ユニット 峯 弘 講師
峯弘 講師にインタビュー
――エキゾチックアニマル診療科とは、どのような診療科なのでしょうか
犬や猫以外の動物を専門に診療する部門です。対象は非常に幅広く、ウサギやフェレット、ハムスター、チンチラといった小型哺乳類から、セキセイインコやオカメインコ、ヨウムなどの鳥類、リクガメやフトアゴヒゲトカゲ、ヘビ類などの爬虫類、さらにはカエルやウーパールーパーといった両生類まで対応しています。大学病院として独立した診療科を設置しているのは、日本でも本学だけです。
エキゾチックアニマルは診療できる獣医師がまだ少なく、地域によっては適切な医療を受けることが難しい現状があります。北海道内でも専門的な診療を受けられる施設は限られており、遠方からご来院いただくケースも少なくありません。 そうした課題に対し、大学病院ならではの設備と専門性を活かして高度な医療を提供することが、私たちの役割です。
エコー検査を受けるヘビの様子
エコー検査を受けるカメの様子
――なぜ今、エキゾチックアニマルなのか。本診療の特徴や強みについて教えてください
近年、エキゾチックアニマルの飼育数は増加しており、それに伴って専門医療のニーズも高まっています。しかし、それに対応できる体制はまだ十分とは言えません。本診療科では、臨床経験に基づいた質の高い獣医療を犬・猫以外の動物にも提供することで、動物と飼い主のQOL向上に貢献していきたいと考えています。
また、本診療科の大きな強みとして、CT検査などの高度な画像診断を活用し、より正確な診断と治療を行っている点があります。エキゾチックアニマルは体が小さく、症状がわかりにくいため、精度の高い診断技術は非常に重要です。本学では2025年度に、デュアルエナジー撮影とハイレゾ技術を搭載した最新のCT装置を導入しました。この装置は従来の機器と比べて撮影時間を大幅に短縮でき、動物への負担が少ないのが特長です。さらに、撮影が速いことで麻酔をかけずに検査できる可能性も広がりました。麻酔リスクの高い小さな動物たちにとって、これは大きなメリットです。デュアルエナジーとハイレゾの両方を搭載したCT装置は、アジア圏の獣医系大学では本学が唯一です。 また、症例データを蓄積し、それをもとに診療の質を高めていくことにも力を入れています。経験に依存しがちな分野だからこそ、データに基づく医療を確立していきたいと考えています。
視診されているフトアゴヒゲトカゲ
抗がん剤治療を受けるフェレット
――新たな分野の診療科ですが大切にしていることはなんでしょうか。
飼い主さんが”ためらわずに受診できる”環境をつくることです。エキゾチックアニマルの不調は、ごく小さな変化として現れることが多いです。食欲がほんの少し落ちた、動きがいつもより鈍い、そうした変化に気づいたときに、気軽に相談していただける場でありたいと思っています。
エキゾチックアニマルの飼い主さんの中には、”こんなことで受診していいのだろうか”と迷われる方もいらっしゃいます。当科では、かかりつけの動物病院からの紹介がなくても直接ご予約いただけるようにしています。ちょっとした心配事でも来ていただけることが、病気の早期発見につながります。
また、診療では”今のありのままの状態”を客観的に把握することを大切にしています。調子が良い時のデータを残しておくことで、体調を崩した時に”いつもと何が違うのか”を正確に判断できるようになります。血液検査やCTスキャンなどを組み合わせながら、それぞれの種に適した診断と治療方法の確立を目指しています。 まだ確立されていない部分も多い分野だからこそ、研究と臨床が密接に結びついています。
――教育・研究の面ではどのような取り組みをされていますか。
診療と並行して、次世代の獣医師育成にも力を入れています。現在、エキゾチックアニマルを専門的に診療できる獣医師は不足しており、教育の重要性は非常に高いです。
また、学会発表などを通じて最新の知見や技術を発信し、国内のエキゾチックアニマル医療全体の底上げにも貢献しています。 診療の質の”均一化”を目指すことも、大きなテーマの一つです。どの地域でも、どの動物病院でも、エキゾチックアニマルが適切な医療を受けられるようになること。そのために、大学病院として臨床データを蓄積し、エビデンスとして発信していくことが私たちの使命だと考えています。
――峯先生が行われている授業や実習の様子についても、是非教えてください。
座学では、昨年度は獣医学類4年生および獣医保健看護学類3年生に、野生動物学の授業の一部として講義を行いました。エキゾチックアニマルの診療・治療として、ウサギ、ハムスター、カメ、鳥類についてそれぞれ授業を行っています。
また、獣医学類5年生には参加型伴侶動物臨床実習として、全ての診療科を体験するクリニカルローテーションの中で、実際の症例を通じた実習を行っています。実際の動物病院では犬・猫以外の動物も日々運ばれてきます。あらゆる動物種に対しても対応できるよう、問診、診断、治療計画の作成、治療効果の評価について、学生たちと一緒に考えながら教育しています。
印象的だったのは、カメの授業です。最初に、学生たちにミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)をじっくり観察してもらいます。その後、カメの呼吸のしくみや代謝の特徴、血液検査の方法や結果の読み方についてレクチャーし、授業の最後にもう一度同じカメを観察してもらいました。すると学生たちから”見る目が変わった””普段何気なく見ていた動物なのに、全然違って見える”という声が上がりました。日常で目にする動物に対して、獣医学的な新しい視点が得られた瞬間を共有できたことは、私にとっても嬉しい経験でした。
実習での検査のために鎮静をかけている様子
外部講師を招いての実習の様子
――最後に、エキゾチックアニマルにかかわる獣医師を目指すこれからの方々へ、メッセージをお願いします。
エキゾチックアニマルの分野は、まだ発展途上で、これからの時代を担う皆さんがつくっていく分野です。診療体系や治療法が確立されていない部分も多く、一つ一つの経験が新しい医療につながっていきます。”わからないこと”が多い分野だからこそ、それを”わかる”に変えていく過程そのものが、やりがいであり面白さです。
そうした現場に対応できる獣医師になるためにも、在学中に幅広い動物種に触れ、学ぶことはとても重要です。
本学では、大学病院としてエキゾチックアニマルの専門診療を行っているからこそ、学生のうちから実際の症例に触れ、専門的な知識と技術を身につけることができます。犬や猫だけでなく、ウサギ、鳥、爬虫類、さまざまな動物の診療を経験できる環境は、全国的にも珍しいものです。
みなさんの”好き”という気持ちを大切にしながら、それを専門性へと高めていける環境がここにはあります。 これから獣医師を目指す皆さんには、ぜひ多様な命に向き合う視点を持ち、自分の可能性を広げていってほしいと思います。
【関連】
◆獣医学群獣医学類 峯 弘 講師(伴侶動物外科学ユニット)
https://www.rakuno.ac.jp/teacher/34766.html
◆酪農学園大学附属動物医療センター 伴侶動物医療部門(エキゾチックアニマル)
https://rakuno-exo-hp.netlify.app/
◆酪農学園大学附属動物医療センター
https://amc.rakuno.ac.jp/
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